クリッピング(オーディオ)
フォーマットが扱える以上のレベルを信号が要求したときに起きる現象で、波形の頂点が平らに切り取られ、元とは別物になってしまう。
固定小数点の整数フォーマットには、0 dBFSより上の値が存在しない。本来もっと大きかったはずのサンプルは、表現できる最大値に置き換えられ、頂点を削られた正弦波は矩形波へと近づいていく。その過程で奇数次倍音が連なって現れ、耳には耳障りなザラつきとして聞こえる。アナログ回路のクリップはもう少し穏やかで、トランジスタや真空管が曲線をじわじわと曲げていく。ギタリストがこれに大金を払い、レコーディングエンジニアがこれを避けるために大金を払うのは、そのためだ。
その後、ソフトクリッピングはそれ自体がエフェクトとして定着し、マスタリング用リミッターも意図的に使っている。現代のDAWは内部をすべて32ビットまたは64ビットの浮動小数点で処理するので、チャンネルが0を大きく超えても害はない。実際に損なわれるのは、整数形式でディスクに書き出したときか、サンプルの谷間に隠れたピークがD/Aコンバーターに届いたときだけである。