物理モデリング合成
出てくる音を真似るのではなく、弦や管や胴といった楽器そのものをシミュレートする合成方式。
音色を波形として記述する代わりに、ハンマーが弦を振動させたとき、あるいは気流が管を共鳴させたときに何が起きるかを計算する。1983年のカープラス・ストロング法は、これがいかに安上がりにできるかを示した。短いノイズのバーストを、単純なローパスフィルター付きのディレイラインの中で循環させるだけで、弾いた弦にそっくりの音になる。スタンフォード大学CCRMAのジュリアス・O・スミスは、この発想をデジタルウェーブガイドへと一般化した。
Yamahaはこの研究のライセンスを受けて、1994年にVL1を発売した。息を吹き込み、オーバーブローし、サックスのようにかすれた音も出せたが、同時発音数は2音で、価格もそれ相応だった。見返りは表現力である。モデルは「どの鍵盤か」だけでなく「どう弾いたか」にも反応する。2006年に登場したPianoteqは、サンプルを1つも使わずにピアノ全体を再現し、インストール容量も数十MBに収まる。