ネットワーク透過性
プログラムと、その描画先の画面が別々のマシンにあっても、プログラムがその違いに気づかないというX11の性質。
Xプロトコルは通常のバイトストリーム上で動き、サーバーは接続元を気にしない。同一マシンのUnixソケットでも、ネットワーク越しのTCP 6000番ポート+ディスプレイ番号でも、元はDECnetでもよい。環境変数DISPLAYが接続先を示し、別ホストを指して起動すれば、コードを一行も変えずにそちらへ窓が開く。これが1980年代後半のXターミナルを可能にした。画面、キーボード、ROM内のXサーバーだけを持ち、計算はすべてサーバールームの共有Unixマシンが行う。
この発想はプロトコル本体より早く古びた。返答を要するXlib呼び出しはすべてラウンドトリップなので、帯域より遅延が効く。後から加わった重い仕組み、MIT-SHMによる共有メモリやDRIによる直接レンダリングの3Dは、ローカルでしか使えない。LBXは通信の圧縮を試み、NoMachineのNXがより上手くやったが、現代のデスクトップでかつての要点だった経路を通るものはほぼない。Waylandはそこから結論を引き出し、ネットワークプロトコルを持たない。リモートアクセスはコンポジターの問題だ。SSH経由で別マシンのプログラムを動かすのが、この夢の名残で、今も動く。