Memex
1945年にVannevar Bushが描いた、マイクロフィルムと連想の道筋でできた机。以後のあらゆるハイパーテキストが「これに似ている」と言われてきた。
Bushは1945年7月の『The Atlantic』誌に載った「As We May Think」で問題を示した。科学文献は誰にも読み切れない速さで増え、階層と索引で整理されているのに、人間の頭は連想で働く。答えとして彼が挙げたのは家具だった。半透明の画面が二つ、キーボード、いくつかのレバー、下にはマイクロフィルムを収めた机である。
肝心なのは蓄積ではなく道筋(トレイル)だった。使い手は二つの文書を結んで名前を付けた道筋にでき、後から前後に辿れ、同僚に手渡すこともできる。Bushは、文献の中に道筋を切り開くことを生業にする「トレイル・ブレイザー」という職業まで予言した。ハイパーリンクの50年前の姿だが、指せるのは自分でフィルムの複製を持っている文書だけという違いがある。
機械は作られず、マイクロフィルムという素材も適切ではなかった。それでもDouglas Engelbartは若い兵士としてフィリピンでこの論文を読み、Ted Nelsonはこれをザナドゥ計画の出発点にした。Webの歴史のどれにも引用されるのは、引用に足る初期の文献がそれほど少ないことの裏返しかもしれない。